2007年度 - 再チャレンジ支援教育プログラム

平成19年度文部科学省委託事業 社会人学び直しニーズ対応教育推進事業
Phase2:研究講座

2008年1月13日

【研究講座】「自然と人」をテーマとした事業企画の課題    株式会社ピッキオ 代表取締役 桑田 慎也

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実施記録:

はじめに

挨拶及び講座の主旨説明から始まり、出席者から自己紹介を兼ねて現在の関心事を一言ずつ発表していただいた。引き続き、講師の自己紹介と、ピッキオについての紹介があった。

ピッキオは、「エコツアー事業」「野生生物保護管理事業」「環境教育事業」「エコツーリズムサポート事業」の4つの事業を展開している。NPOと株式会社の二つの顔を持ち、公益事業の展開と環境教育の事業化、そしてそれを支える経営戦略について先駆的な取り組みがなされており、環境事業のモデルとなっている。本講座は、主に先の3事業に沿って、事業モデルとなる要因などを含め、ピッキオの取り組みの現状と課題について報告いただいた。

講座の要点

①「エコツアー事業」

NPO及び株式会社として、地域資源を活かした観光「エコツーリズム」を柱とした事業を展開する。エコツーリズムの理念は、自然環境本来の姿を保ちながら、経済価値を求める。つまり、自然資源の持続的保全に貢献するビジネスである。その方法は、すでにある地域文化の魅力を引き出して、演出して見せるガイドやインタプリテーションによることが大きい。また、地域資源を観光資源化するためには、自然資源を維持管理する仕組み(野生生物保護管理)も備える必要がある。

本事業運営の現状は、年間15,000人の需要があり、それへの対応は14名の年間雇用者で行っている。ただし、夏季などの繁忙期は期限付きでスタッフを増やす。この状況でも、プログラムの質を維持することに最大限努めている。さらに、季節的な需要に応じて、インタープリターなどスタッフの雇用には固定費(人件費)の変動があり、それを緩和するために、リゾート内の他部署へ出向することもある。

②NPO活動としての野生生物保護管理(クマ保護事業)

軽井沢で顕著な野生動物管理の課題は、クマの出没問題である。この発端は、あるホテルがクマに餌付けしていたことであり、そのことでクマが人間界へ接近し、そこに、コンポストなどのルーズな管理などゴミ処理の現状が重なり、クマ出没の頻発につながった。しかし、人間界にとってクマは悪者になり、駆除の対象となっている。NPOピッキオは、1998年にはじめてクマ対策を行政へ掛け合った。地元でのクマ保護への合意形成は難しい課題であった。そこで、クマと共生する町づくりを目的に、ベアードッグの導入(新規の取り組み)を図った。科学的な調査などで得た情報を提供することで安心情報を流すこととあいまって、犬を介して住民とのふれあいが生まれるなど、徐々に住民との信頼関係が築かれていった。その結果、2006年には国際クマ会議を誘致するまでとなり、町への貢献も拡大している。

③環境教育事業―ネイチャーウォッチング事業を事例として―

星野リゾートの敷地内にあるビジターセンターを拠点とした取り組みである。延べ10,000

人の参加を得る事業。国設軽井沢野鳥の森で、1回2時間、1500円の参加費で、日に3回開催(9時 10時 13時半)する。参加者の80%が家族で、そのニーズにあったプログラムを検討している。例えば、時間を短縮して1時間として、合わせて参加費も安くして参加者を増やす試みも行った。その結果、収益は上がった。市場調査とプログラム開発は欠かせないことである。そのほか、別荘地での需要を見越して、子ども向け事業やプライベイトエコツアー事業があり、独自の展開を図っている。

また、環境教育プログラムの特徴として、野生動物管理部門の成果を活用することで、科学的で説得力があり、面白さが倍増するプログラムが展開できている。発信機を付けたヤマアカガエルの軌跡を辿り森の生態系を明らかにすることや、クマの痕跡を見に行くツアーなども展開できている。

④広報戦略

2006年のクマ国際会議の開催では、ピッキオの提案で、高校生にもクマ対策についての発表の場を設けるなどして、メディアの関心を大きく引くことができた。メイディア数は38媒体で、その効果は1億3000万円広告費に相当する。クマと共生する町・軽井沢をアピールでき、町の社会的価値とともに、ピッキオの企業価値を高めた。

⑤経営戦略

顧客の満足度調査(CS活動)を実施している。7段階評価で、「とてもよかった」という顧客はリピーター率が高く、プラスの口コミの発信源となる。一方で、満足できない客のマイナスの口コミはプラスの口込みの倍で伝わり大きなリスクである。紙1枚の調査は大きな成果に結びつくことを実感した。本当のニーズを探り、付加価値をつけたプログラム開発に繋げていっている。

 

主な質問は下記のとおりであった。講座の中で応えられた。

・スタッフの人事交流について

・星野リゾートの組織活動について

・NPOでの収益事業について

・クマの保護と駆除の問題

・合意形成の手法について


実施後の感想等:

NPO活動の活性化という点で示唆に富んだ講座内容であった。理念先行のNPO活動では結局運営に精一杯で、理念が社会化されずに留まっているケースが多い。そこで、今回の事例では、ビジネスマインドを忘れずに、正しく市場調査を行い、CS活動を通して評価からニーズを計り、ステイクホルダーのサービスや利益を拡大することで、本来の活動理念の発展と継承につながることを確認した。

また組織運営では、ユニットという概念を取り入れ、企業組織のフラット化を促進していた。誰でもがプロジェクトリーダーに手を上げられるという、やりがいを醸成する柔軟な組織風土づくりにイノベイティブなものを感じた。

エコツアーなど環境資源を活かした事業の展開にも関心が深まった。環境事業は、他に比較してその場の価値、つまり資源性が高ければ、おのずとプログラムの評価が高くなる。一方で、資源性は高くないが、軽井沢などのように市場性が高い場合は、ただ自然を見せるだけではなく、エンターテイメント性を発揮することが肝要であることを学んだ。演出する場合は、研究成果を学習活動に応用するなど信頼性を高める工夫が肝要で、そのことがスタッフの自信ややりがいにもつながり、その効果を高めていたようだ。

多くの工夫と努力の上にピッキオブランドがあり、発表にも社会に向けられた責任を全うしているという自信と、常にある挑戦の意気込みが感じられた。 (久山喜久雄)
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