2009年10月 3日

社会起業の意義と実践    西村 仁志(同志社大学大学院総合政策科学研究科 准教授)

西村先生1.JPG 一番初めの講義ということで、社会起業の特徴・意義を同志社大学大学院総合政策科学研究科ソーシャル・イノベーションコースとご自身の活動と共に紹介された。社会的起業の特徴は、民間・市民の活動で、個人営業・任意団体・NPO法人・株式会社など法人の形態を問わずに、やろうと思えば小規模でもすぐに始められ、一定の社会公益性があり、個人のリーダーシップや貢献が大きい点にある。

 近年、NPO法人の活動が活発化しCSRへの意識の高まりから、社会的問題に対して主体的に取り組む営利企業が増加している。世界的にも営利・非営利の境界が曖昧化傾向にある。その一方で、本来社会問題の解決の役割を担うはずの行政が私たちの期待を満たしていないのが現状である。サービスを享受するだけの「住民」という存在ではなく、公共的関心と自己責任をもつ「市民」として地域の問題を自分たちで自治し決めていくことが筋である。行政の仕事を市民・NPOセクターへ移行し、市民の力を有効に活用して市民がアクティブに活動できることが新しい社会のあり方である。そういった意味で、一人一人が社会起業を行う(社会的ニーズに応えるべく問題意識を持って新たな方法論で動く)意義は個々の活動だけではなく、新しい社会への流れの中で世界的にも期待された存在であるということである。


 自分が置かれている現実と必然性(ほっとけない)が最初の原動力になる。また、多様な背景・経験を持つ人が社会起業に関心を持つことで社会を変える新しい道具(その手があったか)を生み出す。この講座は、既にそのような出会いの予感を感じさせている。受講生には、ぜひ新しい領域を生み出していってもらいたい。

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社会を変える市民力~奈良町の町並み保存運動から市民主権型自治体構築へ    木原 勝彬(ローカル・ガバナンス研究所所長)

木原先生1.JPG 奈良市の旧市街である奈良町の町並は歴史的・文化的資源であるという観点から、奈良町の町並保存運動を長年されてきた。活動を通じて行政の開発に住民のまちづくりビジョンが欠落していると感じられ、民間がイニシアティブをとる事を提唱・実行された。活動により議会は都市景観条例を制定、町並保存と住民が住みよいまちづくりが進み、結果的に観光客を呼び込む事に成功した。奈良町再生の経験から自治会・団体・市民のネットワークが課題を共有し話し合う場を構想され、奈良市長・市議会議員選挙立候補予定者と市民による大討論会を企画した。当選後もマニュフェストが実行・達成されたか市民がチェックすることで「市民統制」、「市民の行政力」による自治体改革(市民主権方の自治体)の必要性を説明された。また、社会的・地域的問題に関して、税金の配されるバランスは各地域の需要や役割分担(行政・市民・連携)に最適化すべきで、そのためには地方分権(地域の意思を伝えるシステムの構築、税金使用の自治的決定権)を進める重要性を説かれた。


 受講生からは行政を巻き込む具体的方法、持続的活動のための後継者づくり、人の巻き込み方などについて質問が出た。担当者・トップに同時に提案(企画提案書)を働きかける方法、後継者づくりの難しさ、個別やイベントを通じて地道に参加者を募りマスメディアを利用して情報発信していく方法など具体的に説明いただけた。

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ミッションの確認    谷口 知弘(同志社大学大学院総合政策科学研究科 教授)

谷口先生2.JPG 「ミッション」の意味、役割、価値、重要性についてフローレンスを例に挙げ解説した後、ワークショップ。まだ初日でアイデアが固まってないが、今持っている問題意識をまとめる(①解決すべき問題点:問題は何か・ニーズはあるか、②ビジョン:目指すべき社会のあり方、③ミッション:果たすべき使命、④事業アイデア)。4グループに分かれ、グループ内で自己紹介・各人発表後に意見交換。最後に全受講生が全員の前で発表(持ち時間1分程度)。

 

 

 

 

 

<受講生の発表内容>
・着物を着ることで豊かな心を取り戻し、笑顔があふれる日本にしたい。
・貧困と格差問題に取り組む社会起業家を支援するファンドの設立。
・多忙な仕事を持つ人にペットと生きるチャンスを与える事業。
・社会的弱者の支援機関の情報統合と支援者・相談者をコーディネートしたい。
・孤独を抱えて悩める人にコミュニティの場を提供したい。
・木屋町通の町並保存と歴史的資産の活用、そして夏の床を官民あげて盛り上げたい。
・若年者層と高齢化問題を抱える地域をマッチングする社会起業家の支援。
・農業生産者と食べる人のつながりを大切にし、食べ物を味わう文化を広める。
・在宅介護者の支援、相談、息抜きの助けをしたい。
・湖・海での自然の中で子供の危険察知能力を高める教育活動をしたい。
・買い物をしたら知らぬ間に地域貢献のポイントがたまるような活動を考えたい。
・大和高田市のシャッター街に若年層の担い手を集め、コミュニティの場作りを。
・西伊豆で学んだ禅や庭造りを行かせる空間作りをしたい。


<谷口先生講評>
それぞれ問題点を捉えているが、まだアイデアに独自性が不足。今後、たくさんの事例、世の中の先行の取組を見ていってほしい。独自性は掛け合わせでもできるので自分が考えている事業以外にも目を向けてほしい。半年後の事業発表を楽しみにする。

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2009年10月10日

アントレプレナーシップとイノベーション    原田 紀久子(NPO法人アントレプレナーシップ開発センター 理事長)

原田1-1.JPG まず「アントレプレナーシップ」と「イノベーション」の言葉の意味や由来を説明された。ビル・レイトンが述べた「アントレプレナーシップとは飢えた人々に魚を与えることだけでもないしどうやって魚を獲るかを教えることだけでもない。アントレプレナーシップは漁業そのものを変革することを究極の目標とする」という定義を紹介し、概念整理をした。「漁業」にあたるもの、アントレプレナーシップがなぜ大切か、成功する起業家はどういう行動特性を持っているのか、事業をどういう手順で始め進めるか、次の時代にどんなニーズが生まれるか等を矢継ぎ早に受講生に質問され、次々とブレインストーミングした。
 その後、実際にNPOを立ち上げたい人のために、事業モデルと収益構造の関係性を解説され、原田氏が主催される事業を例に運営資金の収集方法の紹介、非営利団体の特徴として、法人格の有無、活動分野、事業規模、事業方法、収支傾向、スタッフの年収モデルなどの営利企業との違いを説明された。さらに、実際に収支がうまく回っているNPOの事業モデル四つ(きょうとNPOセンターを代表とする中間支援機関型・エティックを代表とする共同事業型・かものはしプロジェクトを代表とする資金循環型・フローレンスを代表とする自主事業型)の紹介と事業運営上の問題点を紹介された。

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身近な問題解決から:事例研究    吉野 智和(NPO法人!-style 統括マネージャー)・ 元地 裕子(アクシ株式会社 代表取締役社長)

吉野.JPG【!-style】
 「!-style」(エクスクラメーション・スタイル)はNPO法人名であり、NPO法人、株式会社J・F・Sを統括するプロジェクト名でもある。プロジェクトはFactory(生産部門)、Design(デザイン部門)、Foods(飲食部門)、Store(流通・販売部門)、Brain(コンサルタント部門)という各セクションの連携で成り立つ。障がい者の可能性や仕事力を最大限に引き出し、一資源として社会に認められる・求められる存在になることをミッションとされている。
 福祉施設での生産は手作りなので小ロットの注文に対応できる点、施設によっては休眠状態の生産設備がある点などを強みにし、プロのデザイナーを活用することで市場と販売ルートを確立された。プロジェクトは障害者を支援するNPO法人に企業力を付加し、株式会社には自社製品のための工場拠点をもつという補完関係をとり、相手先との契約都合に合わせて法人を使い分けている。
 これまでに大手通販企業と商品の開発・販売等での連携、店舗内装企業とタイアップで新たなブランドを開発、直島のみやげ物店へのオリジナル商品の企画提案がプロジェクトを通して実現された。また、京都授産振興センターが運営する「はあとガーデン」には!-Factoryで加工した食品を真空冷凍で提供しており、作りたてに近い美味しさ、レストランでの簡単な加工方法の確立、施設生産の農作物利用のほか、他のレトルト業者と取引するよりもレストラン側に高い利益分配を行っている。
 課題は、今後事業発展をするための人材育成。求めるのはソーシャルクリエーターとなりうる人材と明確である。しかし、今後、初期スタッフとはモチベーションの違いがある後進に対し、理論的に育成できかという点にある。

 

 

 

【アクシ株式会社】
元地.JPG 在日アジア系外国人の方たちの前向きでおもてなし上手な面に接し、彼女たちのホスピタリティーが発揮できる就業現場として介護分野への在日外国人派遣事業を思いつかれた。長年日本に在住する外国人を教育し、就業の手助けをするという点が、外国人を招いて行う国の介護事業とは違う点である。
 派遣前研修として日本社会での重要事項(挨拶・時間厳守・人間関係など)、介護施設のシステムや専門用語、日本語教育、OJT形式の研修などサポート体制に重点を置いているが、当社・派遣先・スタッフとの信頼関係を構築するのに時間がかかり収益に結びつきにくい部分がある。しかも人的センスが必要な仕事のためフォローする社員の人材獲得が難しい。しかし、採用された派遣スタッフはヘルパー2級を持つ人や同じ就業場所で長期働くなどスキル、就業意欲ともに高く、高齢者の方に人気がある。語学ハンデがある人でも介護記録がつけられるようなシステムに変更すれば現場での問題は特にない。
 課題は、外国人への偏見があり時給が安くないと仕事が取れないことである。営業を日本人が通いにくい所などにかけて競合対策をしている。また、現在派遣に対してイメージが良くないので、紹介予定派遣以外の付加価値をつけたサービス開発の必要性がある。外国人が介護する具体的なイメージを持ってもらうために自社HPの改善・動画のアップなどを計画している。

 

<Q&A>
【!-style】受講生からは、ネットワークの作り方、起業のきっかけ、NPO法人と株式会社の使い分けの方法等の質問があり、営業方法、福祉施設での職員時代に感じた「就労者へはがんばれ・バザーの客にはがんばって作りました」という姿勢への反感、社会的イメージに対応して法人それぞれの特性を生かしていることを説明された。
【アクシ株式会社】具体的な事業内容や施設の傾向等についての質問に対し、在日外国人のビザ(日本人と結婚して永住権がある)、登録型派遣の理由、ヘルパー資格の有無、利用施設からの好評の声(日本人より日本人らしい)などを説明された。
 両社共通して情報発信に関しての質問には、新聞記者のバイアスがあるのでメディアを選別すること、HPの重要性、プレリリースの利用などを挙げられた。最後に原田氏の「事業を始めて良かったことは?」という質問に、喜んでくれる人がいること、勤め人にはありえない人生経験、人間関係が180度変わったことと応えて頂いた。

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ミッションと事業モデル    原田 紀久子(NPO法人アントレプレナーシップ開発センター 理事長)

原田2-1.JPG 前の時間に、福祉業界で先進的な事業に挑戦中である両講師のお話を伺いながら、受講生はSWOT分析(自社の強み・弱み、外部環境の機会・脅威)と4P4C(製品・価格・流通・プロモーション/顧客の抱える問題解決・顧客が支払う費用・顧客の購買時の利便性・コミュニケーション)をワークシートに記入し両社の抱える課題を整理した。本講義に置いては特に強み・弱みについて議論した後、強みを生かし課題を克服する今後の事業展開案を4グループに分かれて論議し、提案内容をグループ代表者が発表して他グループからの質疑応答を行った。


【アクシ株式会社について】施設の利用者さんには評判が良いのだから、外国人に対する不安感を解消するのにHP上の動画紹介で済まさずに、直接利用されている施設へ招く機会を設けてみる。スタッフフォローのコストが高いが、今後経験を積んだ派遣スタッフがフォローに参加すること、登録スタッフ同士のネットワークを築くこと、問題解決のマニュアルを設けることで体系化・効率化する等案が出た。


【!-styleについて】作業所や福祉施設についての知識(就労作業の給与額、施設への補助金、施設利用料の支払い義務、障害者自立支援法)が受講生に乏しく、障がい者の就労移行支援施設の在り方について疑問・議論があった。その上で吉野氏が実践しているNPO法人と株式会社が連携した作業所の商品流通のシステムについて今後の可能性を話し合ったが、難しい課題となった。

 最後に原田氏は「自分の分野を勉強する必要性」を説かれ、現行の法律を変える意気込みで挑戦してもらいたい、というエールを送った。

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2009年10月17日

まちづくりとパートナーシップ    小田切 康彦(日本学術振興会 特別研究員)

小田切2.JPG パートナーシップ型ガバナンスとは、個人・企業・NPOなど社会を構成する人や組織が合同で決定、生産活動を行いその責任を共有する中でどう良い社会にしていくか、どう役割分担をしていくかというあり方を意味する。その二例としてイギリスのDT(Development Trusts)と自身が設立した京都洛中北部のまちづくり共生会を紹介。DTは開発公社と訳し土地・建物を活用(スポーツ振興・教育・営利企業への賃貸等)して利潤を生み出し目的の非営利組織(地域)に資金を循環させており、イギリス政府が保障有限会社・チャリティ(税金優遇がある)のどちらにも法的位置づけを認めている点で、日本のNPO法人と違い基盤も大きい。二例目のまちづくり共生会は京都洛中北部の活性化を目指す任意団体であったが、財政規模が拡大したため非営利・営利に部門を分化し資金を循環させる仕組みづくりをした。コミュニティ崩壊を止めるため文化振興、観光振興、商業振興、環境整備の4つの柱でまわしている。祭りに地域住民の参加を促すため小学校と連携、商店街に人を呼び込むため体験型観光企画の開発、景観保存を防災と絡めて推進するなど工夫をされた。パートナーシップといっても代表者は社会的契約、利益、リスクマネジメントなど責任を負わねばならず、経営組織として活動しないといけないという柔軟なマネジメントが求められている。


 受講生からは具体的な資金の回し方、地域外の人間がコミュニティビジネスを行うことについての地域の人の反応に関して等質問があがり、観光・商品企画などで出した利益がお祭り振興へ支出されること、地域の協力を得て実行し、100%賛成のみが成功と考えず、最終的には地元の人に引き継がれれば成功とみると答えられた。

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市民社会論~現代の市民社会と市民力1    今里 滋(同志社大学大学院総合政策科学研究科 教授)

今里1.JPG 「市民社会」という言葉は馴染みが薄いが、概念は古代アテネのポリス、イタリアの都市国家、イギリス市民階級の革命、京都・博多・堺の町衆などに通ずるものがあると解説される。一定した定義はないが学術的には、家族と国家の中間的にある(地域のために活動しようする)領域で、そこでは「アクターたちは市場的利益も国家内の権力も追求しない」という。世の中は、税金さえ払えば政府が面倒を見る福祉国家(ガバメント)から、住民自身が公共問題を解決することを権利・義務と自覚する社会(ガバナンス)へあり方が変化した。その実践として、今里氏が経験された活動について写真を交えユーモラスに紹介された。自身が地域社会の問題に気づき地域活動(運動会、消防団等)へ参加して行く過程、問題解決が出来なくなった自治会に代わって(なぜできないか戦中からの歴史も振り返りながら)箱崎まちづくり協議会、筥崎まちづくり放談会を結成した経緯、その会で実行したオープンテラスの設置、障害児学童保育、市民劇場の建設、カーシェアリング、無農薬有機野菜のコミュニティレストラン経営、田舎事業としてのグリーンツーリズムや長崎版イベリコ豚の生産などを次々に披露された。


 実践された「ソーシャル・イノベーション」は二つ。一つは住民自治(地域で地域を守っていくということ)、もう一つは、地域社会の中でビジネス(知的障がい者の学童保育、劇場、レストラン)を展開し社会的価値(みんながそれはいいことだ、と応援してくれるということ)を生み出したこと。住民自治・社会起業をそれぞれ柱としていけば、税金が高い北欧型の政策でなくても"そこそこの税金"で快適に暮らしていける社会が築けるのだと、今里氏は説かれた。

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市民社会論~現代の市民社会と市民力2    富野 暉一郎(龍谷大学法学部 教授)

富野1.JPG まず、自己紹介を兼ねて逗子市長となるきっかけの米軍基地弾薬庫への市民反対運動の紹介、逗子市長経験から得たパートナーシップ・市民自治に関するアイデア(行政主体の公共に市民が参加するのではなく、公共の相当部分を市民セクター・地域社会・企業で引き受ける)の実践的知見を行政学分野においてどのように位置づけるかを説明された。


 次に、パートナーシップを考える上での重要点として、2000年の地方自治法改正が憲法の読み方を二点大きく変えたことを説明。一つ目はそれまで地方公共団体の組織運営・範囲は法律で定めていたが、改正により地方は独立性をもって業務を行えるようになったこと。二つ目は、国は法律を作る際は地方自治の本旨を尊重しなければならなくなった点である。これは、地方行政職員が法律を理由に窓口で住民の要望を断れなくなり、今ある法律が地方自治を阻害するならば地方から変更を求められることを意味する。しかし、地方自治体が住民ニーズにすべて対応できるわけではなく、かつて賞賛された福祉国家は、近年の経済状況のなかで批判されている。原則「非自由」というパラダイム転換後、持続可能な社会は政府独占の公共では理論的に成り立たないし、行政の公共サービスに依存する社会のあり方では「豊かさ」が「個人の幸せ」に繋がっていない。これからすべきことは「官民」型から「公共私」型社会に変え、「共」の担い手として地域・NPO・企業が参加することで公共サービスを充実させる。そのための人材(地域公共人材)を育成することが重要であると説かれた。

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2009年10月24日

事業のターゲット顧客と市場分析    奥谷京子(WWB/ジャパン(女性のための世界銀行日本支部)代表)

奥谷2.JPG 80年代から始まったWWB/ジャパンの活動(京女塾、「農商工連携」の商品開発、地域活性化事業、起業家セミナー、起業の応援オークション、カフェ経営)やセミナーの卒業生や活動等を説明された。コミュニティビジネス、ソーシャル・アントレプレナーといった言葉が「活動の後からついてきた」と表現されたのが印象的である。支援された様ざまな起業家の事例から、「市場は狭くても確実にほしいという人、50人助けてくれる人が周りにいれば絶対に潰れない」と説かれた。


 起業プランは、自分に出来ること・出来ないこと、好きなこと・嫌いなことなど自分を「仕分け・棚卸」し自己分析することから始まる。無理をせずベストな状態で起業することが成功の秘訣と述べられる。アイデアだけではだめで、どうやって解決するか、誰が喜んでお金を払うかというイメージが明確にあるかが重要である。社会に良いことだけで終わらせず三つの座標軸=Triple Bottom Line(people:地元の人に貢献、planet:地球に優しい、profit:持続可能なため)とこの順番を大事にすることがポイントと説かれた。時代より半歩先を見ることが必要で、例えば雇用を作る点では、自分たち自身が自分を雇う、そういう人をどれだけ作れるかが時代の鍵となる。


 受講生からはWWB/ジャパンと各国との関連性、自己分析のポイントに関する質問等があがり、各支部は独立採算で支部ごとの活動特色があること、自己分析が難しければ家族など身近な人に聞くこと、ニッチでも確実に市場があれば起業できる例などを説明された。

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事業計画書の立案    原田 紀久子(アントレプレナーシップ開発センター 理事長)

原田3-1.JPG  一般的な事業計画書のフォーマットについて(事業内容、事業発想の社会的背景・動機、製品・サービスを提供したい具体的な対象、対象者のニーズ、事業をするうえでの資源の整理、すでにある資源と問題点の整理、具体的に先に出来そうなこと、想定される課題と解決策、今後のスケジュール、開業経費・運転資金見積り表、収支3ヵ年計画、資金計画、人員計画、税金計算)紹介され、記入の仕方・注意点等の説明をされた。また、京都府地域力再生プロジェクトで実際に用いる事業計画書の紹介、原田氏が理事として関わる公益財団法人京都地域創造基金の助成金、制度紹介の後、実際に各人で記入するワークショップを実施された。
 話すトレーニングも兼ねて、3人ずつのグループに分かれ、一人あたり3分間で説明し7分間で他の二人から助言をもらうグループワークを実行。3分間での説明はハードルが高かったのか、時間をオーバーして説明している受講生も見受けられた。また、1頁目から記入に戸惑う受講生も多く見られたが、アイデアを文字にして話すことで各人の問題点が明確になったようである。

 

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非営利事業の資金調達について    関戸 美恵子(NPO法人起業支援ネット 代表理事)

  関戸1.JPG 中間支援機関として草分け的存在の関戸氏は、生協での活動経験から周囲に社会的弱者のためのビジネスをやってみたい人のニーズを感じ、WWB/ジャパンの初代代表に相談して任意団体として事業を開始された。講義では、ますご自身の事業の売上・外部委託費・粗利の推移(初年、次年度、三年度、それ以降)と事業活動の流れを披露され、それぞれの概念を説明された。また、売上げが上るまでの流れを、ご自身の葛藤と転機、経験を踏まえて具体的に説明された。

 「最初の2~3年をどう乗り切るかが鍵」ということで、資本金の集め方(借金、金融機関の融資、市民バンク等)、資本金の見積り方、売上・粗利・経費の関係、単価の見積もり方等について、コーヒー店を例にあげて解説された。特に「私募債」は償還・利子等を自分で決められ、夢を一緒に追いかけてくれる友人等からする借金ではあるがコミュニティビジネスの起業で有効と紹介された。最後に2回目の信用失墜の恐ろしさと再生可能なサービス提供の重要性を強調され、サービス・商品は1回目に無理をして身の丈を越えた仕事をすると、2回目で期待値を下回ったサービスの提供になりかねず、その際の信用の失墜は取り返せないと説かれた。


 受講生から、3年間の資金繰りに関しての苦労話やお金についての勉強方法等の質問があがった。それに対し、夢のためになんでもするという意気込みで、結婚披露宴の司会などをされた経験を披露され、また何でもいいから小さなビジネスを先にしてお金を動かす感覚を身に着けていないと、本を読んで勉強しても頭に入らないとアドバイスされた。

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2009年10月31日

ネットワーキング概論~参加型コミュニケーションデザインの観点から    山口 洋典(同志社大学大学院総合政策科学研究科 准教授・浄土宗應典院主幹)

山口2.JPG ネットワークを生かすことがネットワーキングである。経営資源(ひと・もの・かね・情報・人脈・発想)を借りて何とかしていく、足りないことを補い合うことが大切で、まず私から誰かを信じて頼る(借り物競争の視点)ことでお互いの信頼を作っていくことが出来ると説かれた。また、模式的に考えると、組織は掛け算でグループは足し算で表される。組織は多様性をみるため、例えば個性が重なり合えば大きなパワーとなるが、誰かがマイナスを発せば大きなダメージを被ることもある。組織に負の力をださせないためには組織を最適化しなければならず、そのために自分がしたいこと・出きること・あなたが出きること・他人がしたいこと・われわれがすべきことを考えてすり合せるという、個人の思いを社会へ転換させる視点が必要であると説明された。


 ネットワーキングの実例として、自身が参加された滋賀県草津市の地域通貨の取り組みとその終焉について紹介された。その中で「信頼」と「信用」の違いを解説され、人と関わる力を付けるための基本的方法と、人とつながるための知恵として「自分で出来ることは自分だけでやらない(自立と孤立は異なる)」「他人に迷惑をかけることを恐れない(迷惑を掛け合ってつながりが活きる)」「一人だけではとてもできそうにないことをする(できる+したい+すべきことに挑む)」という点を参考文献ともに紹介された。

 受講生からは地域通貨の活動について質問があがり、メディアに出たことで発生した問題点、対応方法、組織内の方向性の違いなどを解説された。

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市民起業が社会を変える    片岡 勝(市民バンク 代表)

片岡1.JPG 「ホリエモンは社会をイノベートしたか?」片岡氏は「ホリエモンはイノベーターではなかった」と述べる。ホリエモンの事業は既成の真似であり自分で考えて作っている部分が少ない点、金儲け自体は簡単だが、それをどうやって社会全体の仕組みにしてみんなが豊かになるかがそのポイントである。片岡氏の述べる社会起業とは、①今の社会の矛盾に気づくこと、②「良いこと」としてやってはだめ(良いことは時代が変わるとおかしなことなる)、③経営能力をつける(自発性をうながし、人を動かす)④そしてそれをシステムにする、である。

 


<「政治には一切期待してはならない」「行政は99%アウトソーシングできる」>今社会がどれぐらい病んでいるのかという認識がスピードになる。行政の対応では間に合わない。ただしすぐに市民へ移行といっても、リスクをとらない、経営能力が無いのが現状。移行期において穴が開く怖さがある。利益による競争ではなく、自発性・シェアによる競争性をつくるべきである。


<「自分で食っていくようになること」「優秀な人は学校にいく必要ない」>学校では教えてくれないことが多く、現場がフィールドである。学びとは「喜び・悲しみ・くやしさ」の中にある。感情的な中でしか学びは残らない。頭の中、左脳で考えていても体は動かない。感動の字のごとく「感じて動く」こと。考えたらやめてしまう。


 片岡氏は、自由にだけど勝手ではなくしかも管理型でもないという社会を目指されている。社会に対して絶望しながら変えようとされている(政治に期待はしないが提案は書いている)。市民として政治や行政に頼らず、自立して生きていく人が人口の1割でもいれば社会のキャスティングボードが充実するのだが、と片岡氏は述べる。

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