本研究コースの開設にあたって

2005年12月
研究科長 教授 新川 達郎
教務主任 教授 今里 滋

  1. 研究コース設置の背景:学際性と現場性を生かす社会変革の実践と研究

同志社大学大学院総合政策科学研究科では、2006 年4 月から博士課程(前期課程)に、ソーシャル・イノベーション研究コースを開設することにいたしました。これは、2005 年度文部科学省の『魅力ある大学院教育イニシアチブ』に採択されたプログラムによるものでもあります。以下では、本研究科のこれまでの教育研究活動と今後の改善充実方策としての本プログラムの位置づけや、今回の申請プログラムの意義、期待される効果などについて、説明させていただきます。

総合政策科学研究科は、新時代のジェネラリストの養成を目的に、社会人大学院生のために昼夜開講制をとって、1995年に開設されました。以来、公共政策研究と企業政策研究の2コースで600 名あまりの修了生を送り出してきましたが、社会的ニーズの多様化や技術革新の進展に対応して、人間の安全を扱う「ヒューマン・セキュリティ研究コース」と技術経営に関する「技術革新的経営研究コース」の設置に至り、今年それぞれに入学者を迎えております。本研究科の特徴は、学際的な教育研究体制に対応したカリキュラムと専任教員構成、課題解決を志向した教育研究、フィールドリサーチプログラムや調査研究プロジェクトなどの現場主義の教育研究にあります。そして、この特長を生かした魅力ある研究科にするべく、社会的課題解決のための総合政策科学の確立、社会革新のニーズにこたえる新たな教育研究の展開、社会実験による現場主義教育研究の新展開などを目指して、検討をしてまいりました。その結実が、今回の「ソーシャル・イノベーション(社会革新)」の実践家、研究者、教育者の養成プログラムです。

  1. 研究コースの設置目的とカリキュラム:ソーシャル・ドクターを輩出する

ソーシャル・イノベーション研究コースの設置目的は、「ソーシャル・イノベーター」とよぶ地域公共問題解決に活躍する実践者であり研究者でもある人材の養成を目指すとともに、あわせて「ソーシャル・イノベーション」に関する教育研究に当たる人材養成を進めるものです。私たちは、この人材を、ソーシャル・ドクター(社会のお医者さん)と呼んでいます。

このコースの履修プロセスでは、前期課程1年次には基礎系と臨床系の科目群の受講、そして演習科目による社会実験の企画準備、第1次ワークショップの企画と実施を行います。前期課程2年次には、社会実験を行い、その成果を検証し、第2次ワークショップを実施して評価を受け、キャリアデザインの報告と論文を提出します。前期課程では、2回のワークショップ、社会実験、キャリアデザイン、修士学位論文が、修了要件であり、これらが本コースの大きな特徴だと考えています。

2 年後に設置予定の後期課程では、社会実験を継続すると共に、理論的な体系化のための講義科目の単位を3年間で修得します。まず、3年次には、前期課程の成果の検証と新たなワークショップの実施、そして修正を施した社会実験の企画と実施を行います。年度末には公開の研究発表会を開きます。4年次には、社会実験を実施しながら、その中間段階での評価と修正を、ワークショップ等も踏まえて行います。秋には、博士資格候補論文の作成をし、提出します。5年次には、春に社会実験の実施と評価、ワークショップによる第3者評価を行い、また、博士論文の構想の発表会を行います。そして、5年次の秋にはキャリアデザイン報告提出と博士学位論文審査があります。

  1. 教育課程の特徴:社会革新の実践と自らのキャリアデザイン

本研究コースの特徴は、社会実験とワークショップを企画実施し、その評価をきめ細かく求めていること、多様な人材との協力連携関係をつくるコーディネート能力やファシリテーション能力の養成、そして自らの未来を切り開くキャリアデザイン力を求めている点です。本研究コースにおいては、これまでの柔軟で現場主義的な科目編成を前提とし、また現地調査と自らの提案を実践した結果を基礎とした学位論文作成が求められています。そこでは、大学院生の自主的な調査研究企画能力が培われること、また、自らの将来の職業や活動を具体化するキャリアデザインを自ら構築していくという伝統が、新たに創造されようとしています。

また連携を取って活動し、学生指導の役割を果たす地域サポーターやNPO、地域社会組織は、これまでの教育研究の蓄積の中で、協力をいただいてきましたが、その連携をさらに強め、地域社会に貢献できる研究活動の実践を目指していきたいと考えています。これまでの地域研究やその実践が、地域からの贈り物を浪費するだけだった現実を乗り越えて、研究それ自体が地域に貢献し、実践的な知恵や人材を地域にお返しできるような教育研究を目指したいと考えています。

  1. 社会実験:新たな研究手法と研究成果の模索

今回の研究コース設置で決定的に重要な社会実験施設については、大学院の立地を生かし、京町家と農家を拠点として、ワークショップや企画提案の実践を試みようとするものです。施設については、すでに具体的な候補の検討を進めております。なお、在学中の院生諸君が自主的に町家を拠点とした活動をしている実績もありますが、新たなコースではカリキュラムの中に、本格的にこれら施設と大学院教育との関係を明確に位置づけしています。本コースで想定される具体的な研究分野と、実践テーマとしては、新たな福祉ビジネスたとえば子育ての事業おこし、農家との連携による食育活動、子供たちの環境教育としての自然学校などが、事例として想定されています。そして、これらの研究は、院生への教育効果のみならず、現実に社会的に意味のある成果を生むものとすることを重視しており、その結果、社会を変える力を持った修了生を輩出できると考えています。

以上、本研究科に新たに、設置を予定しております「ソーシャル・イノベーション研究コース」について、概要を説明申し上げました。ぜひともこの新しいコースに暖かいご理解、ご支援を賜りたく存じます。

この件についてのお問い合わせ:
同志社大学大学院 総合政策科学研究科 事務室
〒602-0898 京都市上京区烏丸通上立売上る相国寺門前町647-20
TEL(075)251-3860 FAX(075)251-3094

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