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2010年6月 1日

ソーシャル・イノベーション研究センターを開設しました

(1) 研究センター設置の目的
 総合政策科学研究科ソーシャル・イノベーション研究コースは、文部科学省「平成17年度魅力がある大学院教育イニシアティブ」に、本研究科が「ソーシャル・イノベーション研究コース」と題したプログラムが採択されたことを機に設置された。その同コースの趣旨は、「地域社会に生起する具体的公共問題を解決できる実践能力を兼ね備えた行動型研究者の養成」であった。初年度の前期課程への入学生こそ定員10名に対して4名でしかなかったものの、その後は毎年20名を超える応募者および入学者があり、博士後期課程にも、2010年4月現在で、11名の院生が在学している。その結果、総合政策科学研究科でも公共政策コースに次ぐ"大所帯"となっており、2009年度を含め23名が「修士(同志社大学)(ソーシャル・イノベーション)」の学位を取得している。
 このソーシャル・イノベーション研究コース"隆盛"の背景には、社会起業やソーシャル・ビジネスに対する世界的な関心の高まり、そしてその基礎にある市民社会の成長と活性化がある。『VERY』や『フィガロ・ジャポン』のような消費社会を先導する女性向け雑誌にさえ、社会貢献やボランティア活動を称賛する特集が組まれるなど、「利他」という価値観や行動を積極的に評価し、同調しようとする流れが普遍的になりつつある。また自己利益の最大化を追求する経済人モデルに立脚していると見られてきた市場経済それ自体も、社会貢献性の高い商品や企業が優位に立つCRM(= Cause Related Marketing)が広がるなど、倫理化傾向を見せ始めている。民主党政権が掲げる「新しい公共」は実はすでに現実のものとして、社会の本質的な変革をもたらしつつある。
 ソーシャル・イノベーション研究コースは、このような世界的な変革の潮流を領導する知識とスキルを遺憾なく発揮できる人材養成を目的とし続けている。今般設置を申請するソーシャル・イノベーション研究センターは、本研究科ソーシャル・イノベーション研究コースの博士前期課程および博士後期課程を修了したソーシャル・イノベーターたちや、これまでのソーシャル・イノベーション研究コースの教育研究活動――平成19年度文部科学省社会人の学び直しニーズ対応教育推進事業を受託した「ソーシャル・イノベーション型再チャレンジプログラム」や同「同志社有機農業塾」等の競争的外部資金による教育事業を含む――でつながりを持つに至った優れた外部の人材、そして「新しい公共」に期待を寄せ、市民社会との連携によってその目的を実現せんと発想を転換させつつある政府や企業等とのネットワークを活用し、ソーシャル・イノベーション研究コースの教育研究目的を百尺竿頭さらに一歩を進めるべく、ソーシャル・イノベーション研究コースと唇歯輔車の関係に位置づけられるソーシャル・イノベーション研究センターの設置を申請するものである。
 このソーシャル・イノベーション研究センターは、単に研究(リサーチ)にとどまらず、研究成果を実際に適用してソーシャル・イノベーターを生起させるような行動(アクション)を表裏一体・密接不可分なものとして活動していく点に最大の特徴がある。そのコンセプトを図示すれば下記のように描けようか。

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 ソーシャル・イノベーション研究センターには、これまでの修了生群とそこに年々加わっていくであろう新規の修了生を研究フェローとして位置づけ、彼らを主たる"実働部隊"とする。ソーシャル・イノベーション研究コースはソーシャル・イノベーション研究センターに研究フェローを送り出す一方、すでに研究実績を上げている既存修了生を研究フェローとして擁するソーシャル・イノベーション研究センターは、ソーシャル・イノベーション研究コース博士前期課程が履修上の必須要件としているワークショップや社会実験への参画や支援等の研究サポート的機能を果たすなど、両者は互恵的な関係に立つ。

(2) 研究実施計画
 ソーシャル・イノベーション研究センターには、ソーシャル・イノベーション的研究分野に応じて、リサーチ&アクション・コー(Research and Action Corps = RAC)を5部門設置する。
第1部門(RAC_1)は、主として食農関連ソーシャル・イノベーションを志向するコーである。ここは、ソーシャル・イノベーション研究コースが京都市左京区大原に開設した農家・農場施設「農縁館」での事業と密接な関わりを持つことになる。
ここでは、2010年度より、京都府農林水産部農村振興課等と連携しながら、大原の農縁館に「限界集落再生技術研修センター」を設置する予定である。
 第2部門(RAC_2)は、主として環境系のソーシャル・イノベーションを志向するコーである。
 第3部門(RAC_3)は、主としてまちづくり系のソーシャル・イノベーションを志向するコーである。
 第4部門(RAC_4)は、主として芸術・文化関連のソーシャル・イノベーションを志向するコーである。
 そして、第5部門(RAC_5)は、主として教育・福祉系のソーシャル・イノベーションを志向するコーである。
 前述したように、ソーシャル・イノベーション研究コースは、政府(自治体、国連機関を含む)、企業(生活協同組合、農業協同組合を含む)、大学(イタリア・食科学大学・大学院、一般財団法人・地域公共人材開発機構を含む)、NPO(必ずしも特定非営利活動法人の形態を取らない社会的企業、きょうと食育ネットワーク等を含む)などと多様な協働関係を構築している。これらの資源を活用して、共同研究、中山間地活性化事業、福祉NPOの設立など、幅広い分野で研究のみにとどまらない、現実に社会的課題の解決に資するような実践的事業にも取り組んでいく。


センター長 : 今里 滋(政策学部教授)
拠点:江湖館(総合政策科学研究科・町家)